林檎とポラロイド
観てきました。
題名と予告でかなり期待してしまったのが仇となったのか、前半、ヤバい程に眠たかったです。観終わった後も頭上には漫画の様な?マークが3つくらい。でも、何でしょう、憎めない映画でした。
帰路につく間、色々考えました。あまりにも理解不能で。しかし、時間が経つにつれ、一つ一つのシーンを思い返してみると、少ないセリフの中に散りばめられた伏線が見え隠れしてくるではないですかっ!!おっしゃれー!寝てしまった何秒間かが今となっては悔やまれます。
この映画のキャッチコピーでもあるこの言葉、
「哀しい記憶だけ失うことはできませんか?」
全てはここにあったのかっ!と気づかされました。
ストーリーはこちらの公式サイトで。
ここからは私の勝手な考察。ネタバレ有りなので知りたくない方はスルーしてくだされ。
ーーーネタバレ有リ--------------------------------
さてさてこの主人公の男。ところどころで綻びが出ます。
まず、入院中に相部屋になった男との会話で、主人公の、「記憶喪失になった時痛かったか?」という質問に、「頭の芯に鋭い痛みがあった」とその男は答えます。翌朝、医師の回診で気分はどうですか?と聞かれた主人公はこう答えます。「頭の芯に鋭い痛みがある」と。これ結構序盤のシーンで、何か引っかかるな、と思いつつも、思いっきり聞き流してましたが、これって、相部屋の男の言葉を真似てるだけなんですよね。実のところ、主人公にはそんな症状は無かったかと。その他にも、林檎を買っている果物屋の店主に住んでいる場所を聞かれて、忘れているはずの番地をつい言ってしまったり、大好きな林檎を袋いっぱいに詰めている時に「リンゴは人の記憶を定着させる効能もある」という店主の言葉に、急に林檎を買うのをやめてオレンジを買ってきたり、思いがけない場所で、懐いていた近所の飼い犬が男を見かけて寄ってきた時に、その犬の名前を口にしたり、と、思い起こせば伏線がいっぱい。
最後に真面目にこなしていた記憶回復プログラムの一切を捨て、妻のものであろうお墓に花を供え、妻が暮らしていた時のままになっていた自宅に戻り、ボウルに入った林檎をいつも通り食べる。
で、思い出して欲しいのが、この映画のキャッチコピーです。
「哀しい記憶だけ失うことはできませんか?」
結局、主人公は、記憶を失くしていたのではなく、記憶を失くしたかったのではないでしょうか?冒頭のシーンで、主人公が自ら壁に頭をぶつけていましたよね。もしかして、バスで見つかった時は本当に記憶喪失になっていたのかもしれない。が、途中からは明らかに記憶が戻っていると思われるのです。
どこかで『記憶回復プログラム「新しい自分」』という治療の噂を耳にし、新しい自分になろうと試みる、が、しかし、妻が亡くなったという哀しい記憶は決して無くならない事をその中で思い知らされたのではないのでしょうか?
そういえば、入院中、音楽を聴いてそれにマッチした絵を選ぶという記憶テストで、ジングルベルを聴いて主人公が選んだ絵は、結婚式の絵でした。テストではクリスマスツリーの絵を選ぶのが正解ですが、もしかしたらクリスマスの日に結婚したかもしれない、そうでなくても夫婦で楽しかった思い出があったのかもしれない、と思うと、あのちょっとコミカルなシーンも何とも切ない気がします。
ーーーネタバレ終ワリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなわけで、この映画もう1回観たいです。噛めば噛むほど味の出る映画なのかもしれない。
札幌ではシアターキノさんで上映しています。
0コメント