パンズ・ラビリンス

また週末、しかも夜中から朝方にかけて、ダークな映画を観てしまった。

今回は2006年公開 (日本では2007年) の映画『パンズ・ラビリンス』
また結構前の映画を引っ張り出してきたなぁ(笑)

「ラビリンス」という言葉と、主人公が「子供」というだけで、勝手にファンタジーアドベンチャーと思い込んで観始めたのですが、初めのクレジットで「PG-12指定」と出てきて?。しかし、観ていくうちに、なるほど内容がかなり重い。しかもなかなかの残酷シーンもあり、これはただの子供向け映画ではない。

振り返ってみると、私が小学生の時は何ちゃら指定なんてものは無く(大まかな年齢制限みたいなものはあったが)、オカルト映画全盛期も相俟って、残酷なシーンも普通に見放題!だったのですが、今は、特に子供に対して、様々な心的ストレスを考慮して、こういう細かなレイティングになったのですかね?でも、意外と子供って無垢なだけに残酷なものです。こういったシーンを観重ねることで、自分の中にある残虐性と向き合い、人として成長していくものではないのでしょうか?
かく言う私も、子供の時は今考えるとあり得ない残酷なことをしてきました(殺人はしていません)が、今ではこういった残虐シーンも目で覆ってしまう様な大人になりました。(笑)
映画の中のストーリーを客観的に観たり、登場人物に共感したり、反感したりする事は、映画に拘わらず、芸術を鑑賞する上でとても大切なことだと思います。

ーーーーー ここから ネ タ バ レ -----

さて、内容ですが、いきなり主人公が血を流すシーンから始まります。もうこれで粗方の結末は理解できるフラッシュフォワード手法。そこに至るまでのストーリーを観ていく展開です。
舞台は1944年のスペイン内戦下。実の父親の死後、身重の母親と、再婚相手の陸軍大佐の義父が率いる砦の屋敷に住むことになった、おとぎ話ばかり読んでいる主人公オフェリア。義父への恐怖心と具合の悪い母親への心配と不安からか、空想の世界に入り込みます。そこで出会った迷宮の番人パンから3つの試練を与えられるのですが…。というまあまあありがちな内容。
そして、「子供」が主人公のストーリーにありがちな、ダメなことをやってしまう、という無理やりな展開シーン。嫌いなんだよな、こういうの。苛々してしまう。まあ、どんなストーリーにでもあるっちゃああるのですが、子供が主人公の映画には特に苛々シーンが満載です。
この子だけはやんないで、って思ってた主人公オフェリアも案の定やらかしてしまいます。そこまでは、陰のある主人公を前のめりで観ていたのですが、オフェリア、お前もか!

飲むな食うなと言われていたのに葡萄食っちゃいます!(愕)
そしてそのせいで妖精が2体化け物に食われちゃいます!(怒)
そんでもって、それが単なるアクシデントだったと嘘ついちゃいます!(怒怒)

もう、この子、間違いだらけじゃん!と、思いながら途中から苛々。

しかし、主人公のファンタジー的なストーリーと同時進行で、1944年のスペイン内戦下のレジスタンス運動を背景としているので、単なるファンタジーだけでは終わらず、常にピンと張り詰めた緊張感もあります。
特に、主人公オフェリアの義父となった冷酷非道の陸軍大佐と、その元で働きながら、実はレジスタンス運動にかかわっている使用人とのやり取りは、背筋がゾクッとしました。
何でああいう冷酷な役柄は、毎日きちんと髭を剃って、ブーツ磨くの?心理的要素なのかしら?そのシーンだけでゾゾゾっとしますね。

主人公オフェリアが、死に至る寸前、空想(?)の中で綺麗な服を纏い王女となり甦ります。そして迷宮の番人であったパンが登場し「(あなたの)選択は正しかったのです」と…。間違いだらけじゃんと思っていた選択は、最後の最後で正しい選択をしていた。何だかホッとしましたよ。そして、あ、やられた感。

ストーリーの途中で、身重の母親が出産により亡くなった葬儀のシーンで、

「神への道のりは計り知れない。そして赦しは御言葉と秘跡のうちに存在する。神が印を示されてもそれを読み解くのは我々の務め。もはやこの大地は抜け殻となった肉体をチリに戻すだけ。魂は栄光と共に天にある。この世の生は苦しみに満ちており我々は生まれた時から原罪を負う。だが神は限りない叡智で我々をお導き下さる。たとえお姿は見えなくとも。神は我々の心の奥にいつもおられるのだ。」

というナレーションは、主人公の結末シーンとも結びつきます。
そして、ラストシーンで、冒頭のおとぎ話に出てくる王女(天国へ逝ったオフェリア)のその後を語るナレーション。

「(王の跡を継いだ王女が)この世に小さな印を遺していったという。注意して探せばきっと印に出会えるはずだ。」


何かをこちらに問うている。
現実が空想か?空想が現実か?観る人の受け止め方次第で、バットエンドにもハッピーエンドにもなる映画でした。

うつら、うつら、

お腹に優しいブログ

0コメント

  • 1000 / 1000

いなぞふ

粋で鯔背なおばあちゃんを目指しております。
偶に毒を吐きますが許して下され。
趣味は写真撮影。たまちゃんのお父さんくらい病的に写真を撮ります。