またね
一歩、二歩、三歩。
久しぶりに名前を呼ばれた気がして、
四歩、五歩、六歩。
懐かしい声が聞こえた気がして、
七歩、八歩、九歩。
バランスを崩しながら十歩。
いつの間にか寝ていたみたい。
今日は何だか身体が軽い。
どこまでも歩いて行けそう。
起き上がって、ドアをすり抜け、壁もすり抜け、
どんどん進んで、階段も一気に駆け上がって、
辿りついたここは何処だろう?
調子に乗って遠くに来過ぎたみたい。
てくてくあてもなく歩いていたら、
向こうで誰かが手招きしていた。
あの懐かしい優しい笑顔は、お母さん。
久しぶりだね。
暫く見ないと思ったら、ここに居たの?
お母さん、一人で寂しそうだから、
僕もここで一緒に暮らそうと思うんだけど、いいかな?
お父さんとお姉ちゃんは、もも子とぼたんが居るから寂しくないよね。
僕はお母さんとここで暮らします。
みんなからは見えないと思うけど、
お母さんと僕からはみんながよく見えるんだよ。
だから安心してね。
うめ吉。
報告が遅くなりましたが、11月25日金曜日、うめ吉は誰にも看取られずに逝ってしまいました。
朝、いつもの様にストーブの前で寝ていたうめ吉の目やにを取りながら、汚れた足を見て「帰って来たら洗ってあげるから待っててね。行ってくるね。」と、いつもより長めに頭を撫でてあげられたのが私にとってはせめてもの慰めになりました。
2001年5月に我が家にやって来て、約15年。うめ吉という名前は、母親が好きだった中島潔の絵に時々登場するわんこに由来します。
初めて我が家に来た日、私の膝の上で1日中寝ていました。初めて散歩に行った時、蟻の巣に興味津々で、鼻先を突っ込んでしまい、顔中蟻だらけになりました。大きなジャーキーをあげると家中を歩き回って隠しますが、母親が意地悪をしてそれを見つけると、困った様にヒュンヒュン鳴きながらまた隠し場所を探し回りました。母親が亡くなった時は、葬儀場へ運ばれる母を追って、それまで聞いたことのない悲しそうな遠吠えで送りました。嬉しい時、楽しい時、悲しい時、寂しい時、いつも家に帰るとうめ吉が迎えてくれました。
最近では耳も目も悪くなり、うんちをするにも踏ん張れずにヨタヨタしていましたが、ごはんの準備をしているとキラキラとした円らな瞳で猛アピール。
ここ一年で一気に年をとってしまいましたが、まさか、こんなに急に逝ってしまうとは思ってもいませんでした。まだまだ実感がありません。
うめちゃん、
長いような、短いような
約15年、
一緒にいてくれて、
ありがとね。
お母さん、よろしくね。
0コメント