シュヴァルの理想宮

久々のシアターキノ。
町の小さな映画館がどんどん無くなっていった中、未だに古き良き時代の佇まいを遺す愛すべき映画館では、私好みの映画が次々と上映されます。が、なかなか足を運べずかなり久しぶりになってしまいました。

今回の映画はこちら⤵

シュヴァルの理想宮は何度かテレビで見たことがありましたが、その奇妙な建物にこんなストーリーがあったとは…。そうです。これ実話なんです。

郵便配達員のシュヴァルが配達途中に躓いた石に魅せられたことで始まる宮殿造り。と、簡単に言ってしまえばそれまでのお話なのですが、そこまでに至る経緯や、経過、完成、その後にまで、人生の機微に触れるストーリーが次から次へと展開され、郵便配達以外、小さな村から一歩たりとも出ない映画が、まるでロードムービーを観終わった如くに感じられるのです。

妻を亡くしても涙一つ流せない、我が子を里子に出すことになっても何も言えない、寡黙で不器用な郵便配達員が、一人の女性と出会ったことで、娘が生まれ、息子と再会し、人間らしい感情を少しずつ少しずつ表面に出していく姿は、時に歯痒く、時に微笑ましく、いつの間にかじんわりと涙が溢れてくるのです。特に、息子を亡くした時、妻との別れの時の台詞は、かなり心に刺さりました。

シュヴァルが勤続30年で表彰され、素人がどうやって建築の技術を身に付けたのか問われた時、「自然に教えてもらった」とシュヴァルが答えるシーンがあります。あっ!と思いました。今や誰もが知る建築物、サグラダファミリアで有名な建築家、アントニオ・ガウディも同じ様な事を言っていたからです。

一時期ガウディの建築物に夢中になっていた頃、その建築物が独特の奇妙な形になる所以を解明していくテレビ番組を見ました。その時に目から鱗だったのが、フニクラという逆さづり模型。
ガウディはこう言っています。
「美しい形は構造的に安定している。構造は自然から学ばなければならない」
引力に逆らわずして出来上がった造形は美しく丈夫なのです。

調べてみると、この2人、ほぼ同世代を生きていました。同じ時代に生まれた由縁の発想なのか、それともこの台詞自体脚色によるフィクションなのかは分かりませんが、改めてこの2つの建築物を見てみると、とてもよく似ている様な気がします。
映画では、シュヴァルがアンコールワットの写真(新聞記事?)を見て、感動するシーンがあります。このアンコールワットが西欧に知れ渡ったのも同じくらいの時期で、更にこの3つの建築物を見ると、より一層何かしらの関連性があるような気がしてきます。

と、いう様な、ストーリー以外にロマンも感じられる映画です。

これから死ぬまでに何度か繰り返し観たい映画で賞。

※キノでは明日(日跨ぎで本日)までの公開となっています。


映画 シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢 公式HP

シュヴァルの理想宮 公式HP

うつら、うつら、

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いなぞふ

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